土星っ娘

 先頃わたしは、惑星の環を研究している同僚から、土星について、ショッキングな知らせを聞いた。彼が悲しげに言うには、土星の環を構成している粒子の軌道は不安定で、天文学の世界では一瞬にあたる一億年かそこらで、みんなどこかへ飛び去ってしまうかもしれないそうだ。輪があるから土星が大好きなのに、その輪がなくなってしまうとは、なんということか! ありがたいことに、惑星間粒子や衛星間粒子が、一定の割合で、しかも原理的には永遠に、環に付着しつづけるので、飛んでいった分は補充されるかもしれないということがわかった。あなたの顔の皮膚と同じように、惑星の環も、それを構成している粒子は入れ替わってしまうとしても、その集合体としての巨視的存在は存続するようだ。
ニール・ドグラース・タイソン『ブラックホールで死んでみる―タイソン博士の説き語り宇宙論』(ISBN:9784152089731


引用文中、「輪」になってるところと、「環」になってるところがあるんですけど、私の変換ミスではなく、本文がそうなってましたのです。少なくとも私が読んだ版では。