人をいやす

 私は牧野修さんの坊主頭がうらやましくて仕方ない。それというのも、私はこれまで何度も妙齢の――あるいは妙齢ではない――女性作家たちがさも愛おしげに牧野さんの坊主頭を撫でるのを目撃しているからだ。「いやされるのよ」――と恍惚とつぶやいた女性作家さえいる。誤解しないでもらいたい。私は何も牧野さんの坊主頭を撫でたいわけではない。そんなことはぜんぜんない。
 ただ、歳を重ねて、坊主頭に近いまでに髪が薄くなっているこの私なのに、誰からもぜんぜん撫でられたことがない、我が身の不運と不徳を嘆いているのだ。
 どうしたら牧野さんのように人をいやす頭になれるだろう。

山田正紀「わが子よ、『月世界小説』を読みなさい。」(牧野修『月世界小説』(ISBN:9784150311988)より)

……じっさい、これ、どうなんだ。つるつるなの、ふかふかなの?