むかしがたり

えーと。
私は小さい頃「じぶんは○○高校(県内でいちばん難易度が高い公立高校)に行って県内の国立大学に行って会社員になって結婚して子どもを育てる」ものだと思っていました(老いて死ぬ、までは入ってなかった)。というのは、親がそういう風に言ってたからなのでした。親がほんとうにそう思っていたのかは疑わしく、というのは学校の成績に関して教育熱心ではなかったので。たしかに勉強しろとは言われましたが。「親はそう言うものだ」と思っていたから、という気がする。という親の思惑はともかくとして。
他にいろいろ職業がある、というのは知ってた上で、現実的にはそんなもんだろう、と、思っていた、のだと思います。けど、だんだん、「会社員」もいろいろだ、とか、いろいろっつーかそもそも「会社員」ってどんなことやってるの、とか……、自分がいろんなことを知らないってことがわかってきて、ああ、世界は広い――って……
途方に暮れた。
自分が何をするのかは自分で決めていい、けれど、自分で決めなくてはならない、と、わかって、困ったのでした。中学のときかな?
ていうか、つまり私には昔から「やりたいこと」ってのがないんだな。でも、そんなこと――自分が何をやりたいのか、やったらいいのか、なんて、ひとにきくようなもんじゃないっていうか、きいても仕方ないっていうか、私は一度も進路についてひとに相談したことがない。
わからないなら、順当に親に言い聞かせられた道をいけばいいのに、「ふつう」と「へん」では「へん」が好きなので、とりあえず道は踏み外しました。まわりまわって会社員にはなりましたけど。しょせん、真性変人ではなく仮性変人ですから。
親に相談するどころか承諾も求めなかったのはひどい。ぜんぶ事後承諾でしたよ……。でも親のほうも、子どもの好きにさせてやるべきだって思いすぎてた(現在形?)のかもしれない。


自分の好きなように生きていい、って、教えられて知ってはいたけれど、理解することはできなかった。これは、教えられると嘘になる、って類のことなんだと思う。好きにしていいって言うけれど、それはあなたの想定する範囲内でだよね、って。そういう「下心」はなんとなくわかっていても、その「あなた」(親だったり先生だったり)を無視する気がない、というのか、無視してはいけないと思い込んでいる、のか……誰かの想定の範囲外に行こうって思いつかなかった。
それは別に、その誰かが壁をつくっているってわけじゃなくて、自分で自分の範囲を定めてしまっていたのだと思う。って、過去形で書いたけど、いまもどうなんだかな……。
前に恩師に言われたのでした。「自分で、自分はこういうものだって決めてしまってはいけない」って。