飛猿先生の至上命題

まずは貴君の適性を見るッ!と飛猿先生は宣言した。あおい池の表面にゴムの木の葉っぱをのせて、その上で逆立ちしろッ、と指差した。先生それは、その上で、とおっしゃいましても、沈みますでござりましょう、とつっこんだら、沈まないッ、とおっしゃる。水という物体がみっしりつまっている上に、葉っぱでフタをしておるのだ、沈むわけがないッ。ははあ、なるほど。やってみせたら沈んだので先生は感心なさった。みっしりつまっているところにすべりこむとは、貴君はなかなかやるなッ。次に、病院の屋上に案内した飛猿先生は、飛び降りろッ、と指図した。ベッドの者に恐怖の表情を見せつけながら落ちろッ。先生それは、中の方々に対してたいへんなご迷惑とはなりませんでしょうか、と訊いてみたら、何を言う、これは愛だッ。隔たった他人の恐怖の表情はすばらしい安寧をもたらすものだッ。しかし先生、ここから飛び降りたらやつがれは死ぬのではござりませんか。死ぬわけがない、下は土という物体がみっしりつまっておるが、貴君はみっしりつまったところを通り抜けるのは得手ではないかッ、なにしろ水さえつき抜けるのだからなッ。ははあ、なるほど。飛び降りたら木にひっかかりまくりながら落ちた。土は通り抜けなかった。そのまま病院に運び込まれた。先生は賞賛なさった。土は通り抜けなかったが、貴君の恐怖の表情は素晴らしかったッ! この世にあまねく安寧をもたらすほどの恐怖、見事であったッ。そして飛猿先生は、土を通り抜ける訓練をせねばなッ、と宣告した。この地をずっとずっと下に潜っていくと、果てに我々とはまったく異なる肌とことばをもつ人々の国に到達すると聞いておるッ、そこを目指せッ。先生しかし、目指せとおっしゃいましても、先生もそこに至ったことはないのでござりましょう、それを、やつがれごときが無理でござりまする、と奏上したら、確かに至ったことはないが、貴君とは別の経路をゆくことにするッ、この空をたどっていけば同じところに達すると聞いておるッ、なので大気を通り抜けてゆくッ。先生はそこできらりと白い歯を光らせて笑った。しばしの別れとなるが、達者で修行に励めッ、また会おうッ! 先生はびゅんと飛び去ってしまった。それ以来、飛猿先生とはお会いしていない。


……という夢を、見ていません(←そこまでアホじゃねえわー(←シラフで書いてるほうが百万倍アホだー))。
とりあえず、飛猿先生が夢に出てきたらしいんです。なんでだー、と思ったら、ゆうべ寝る前に人生云々って書いたのでまた水戸黄門のテーマが刷り込まれたらしい。た、単純だー。