守るもの

『他人を拒絶することは、最も原始的な防衛手段の一つだ。君はいったい何を守る?』

……人が、自分と自分でないものを区別するのは、自分を守るためだと思う。
自分ひとりじゃ自分を守れないので、自分と近しい者も自分のうち、にして、守りあう。
近しい、と判断する基準は、すごく、たくさん、ある。
まあ、守りあう関係になれるほどの基準は、そんなにないのかな……。でも、基準のそれぞれで、守らなきゃいけないものがある、とも解釈できるか……。そりゃ、たいへんだな……。
――などと、他人事のようにつぶやいてしまうのは、私が、あんまり、自分と近いとか遠いとか、気にしないからなんですが。さすがにまったく気にしないわけでもないんだけど。薄情なんです。
けど、私自身がどう思っていようと、近しい関係の糸が私を守っていることには、違いないのです。頭で理解するのと心で納得するのは違うからな……。
自分の、ふつうでないところ、マイノリティな形質に、より執着しがちなのは、関係の糸が細いからだとも考えられるし、「他の人とは違う自分」をつくった理由として名指ししやすいってことかもしれない。
で、私にもいちおう、ふつうでないところ、っていうのがあるわけですよ。ふつうの人だから。
でも、そのせいで、あるいはそのおかげで、いまの私ができたのだ、とは思いたくない。
思っちゃうけど。
思いたくない。
他の、もろもろもあって、いまの私になっているんだから……ってわけでもなくて。
原因は、なんにもないんだって、思いたい。
……そんなわけないんだけど。
……こんな考えで生きていけるのは、現代日本だからであって。けど、現代日本でなければこう育ちはしなかったはずで。でも、もし現代日本に生まれなかったとしても、こういう自分で、生きにくく、生きてみたいもんだと。……いや、生きにくいのはどうだろう。
……わかんねえなあ、なんなんだね君は。