接続と断絶の反転

携帯電話が世の中にはびこり出した頃
いつでもどこでも話せるってどうなの?って意見も わりとあったのに
その辺の主張今はどこに行っちゃったんだろうなあ
一日に数時間くらいは誰とも話さない時間って
結構必要だと思うんだけどね
特に ぼくみたいな中年男には

いや、ほんとに。どこいっちゃったんだろう。

現在の電話は『基本的にオフで、ときどきオン』という状況である。これを『基本的にオンで、時々オフ』という状況にすればだいぶ変わるだろう。(ここでいってるオンオフっていうのは回線のことで電源のことではない、念のため)

一読して、それはいやだな、と思ったんですけど、よくよく考えてみたら、それはそれでべつにいいのか、っていうか、むしろ、なかなかいいのかもしれない、ということになった。
技術的に常時オンが実現して、みんながそうするようになっても、常時オフにしておく、ってことは「できる」ので、私はそうするだろう。他人のステータスは知りたいけど自分のは知られたくない、ので、そうする。「できる」んだから、問題ない。まあ、知られたくないということすら知られたくないけれども。
で、こういうので「つながってる」感をみんなが持ってくれると、そこからひょいって外れるだけで消えてしまうことができる、それはなかなか魅力的だ。
……と、思ったんですよ。
もちろん、私みたいなのが多数派じゃダメなんですけど。なので、抵抗を感じる人がけっこういるみたいなのは、よい傾向だと判断する。
…………なんなんだかなあ。自分に都合よくしか考えてないね?
でも、現状でも、私は携帯電話を携帯してないし。あんまりかけないしかかってこないし。かかってきてもめったに出ないし。メールはいっさい使ってないし。もっともよく使う機能は目覚まし時計です。それでぜんぜん困りません、私は。困るのは私に連絡をとりたい人。
……って、平然としている人が増えちゃ困るんだっつーのに……。
まあ、たいていの人は、赤の他人は無視できても知人は無視できない、みたいなので。安心。……なんで無視できないんだろう。できないっていうか、したくない、のか。するのに抵抗がある、のか。私だって抵抗はありますけど……めんどくささのほうが勝ってしまう……すると、友達は確実に減ります、減るっていうか、いなくなります。(仕事ではほとんど外出しないので固定電話で足りる。)
そもそも私は電話がきらいなのだ。ひとと話すこと自体、好きじゃない。2〜3人がそばで話しているのを聞いているのは、きらいじゃない。ときどきつっこみを入れるだけなら。なので、多人数の電話なら……まあ、いいか……? それにしたって、職場だけでひとの会話はもうじゅうぶん、おなかいっぱいです、ってもんかも。
いまの高校生みたいに、携帯電話を身近なものとして育っていたら、もっと違ってたかな……とも考えたけど。いま高校生だったとしても(いや、高校生をやったことはないんだけど)、持ってないんじゃないかなあ、携帯電話。なんで持ってないの、って訊かれても、「びんぼーだから〜」とか答えてそうだ。ていうか、いまの高校生にもそういう人、いると思うんだけど。どうだろ。
もっと携帯電話が便利になったとしても、携帯するようにはならないんじゃないか、携帯するようになるのは、持ってると便利、じゃなくて、持ってないと不便、ってなったときじゃないかと予想する。通貨になるとか、強力な身分証明証(通行許可証?)になって、持ってないと検問にひっかかるとか。そうなるともう「電話」じゃないだろうけど。


「今の時代 ネット上から消されたということはいないと同じこと
 つまり死んでしまったも同然

 逆にネット上にある限りそれはいくらでもコピーできる
 消去することで彼女をコピー不可能な存在にする
 それで得をする人達がいるんじゃないかしら」