- 1. ぼくがおきたときが朝である
- 2. いま、ぼくはおきてない
- 3. よって、いまは朝ではない
- 4. 朝でないときはおきなくてよい
- 5. つまり、いまはおきなくてよい
「さて、どこが間違っているでしょう?」
「……ぜんぶ?」
「前提は合っています!」
「どこが前提なの」
「1番の『ぼくがおきたときが朝』と、4番の『朝でないときはおきなくてよい』」
「それさあ、永遠に起きられなくない?」
「朝でないときは起きてはいけない、なら、起きられないけど、起きなくてよい、だから、起きてもいいんだよ」
「じゃあ、ずーっと、起きなくてよい時間なんだね……」
「そうだよ!」
「そんなハキハキと肯定されても……」
「げんきなのはいいことです!」
「顔は眠そうだけど」
「げんきに眠い!」
「というか2番が嘘だよね! 起きてるよね! げんきにしゃべってるよね!」
「僕はげんきに寝ながらしゃべります!」
「事実をまげるなよ……」
「というわけで、反論おわり? 合ってるよね?」
「いや、前提が決定的に間違ってるんだよ」
「どこが?」
「うーん、自分が起きたときが朝だっていう自分ルールはいいとして、だったら朝じゃなければ起きなくていいっていうルールまで両立させることはできないんじゃない?」
「なんで?」
「なんでって、……起きなくちゃいけないときがあるでしょ」
「なんで?」
「……なにそのなんでなんで攻撃」
「起きなくちゃいけないときがあるかどうかは、この問題には含まれておりません」
「……いろいろ騙されてる気がする。どうやっても反論できてしまうような理論は科学じゃないんだよ!」
「論理学は科学じゃないんだよ」
「ええっ!? 論理学の話をしていたの?」
「……いや、うそ論理の話」
「わけわかんなくなってきたよ」
「構造だけを問題にするんだよ。『AであるときがBである』『BでないときはAでなくてもよい』。ほら、両立するでしょ」
「えっ、ええー、ええええー」
「なにがそんなに不満なの」
「だって、直感的に、違うって思うもん」
「だから直感が間違ってるんだよ」
「そう? そうかあ? ずっと、いつでも寝てていいわけじゃない、ってのは間違ってないもん」
「ふーん。でも僕は寝る」
「いまは朝だってば!」