変わらない人

DEATH NOTE (12) (ジャンプ・コミックス)』(原作・大場つぐみ/漫画・小畑健)。デスノート最終巻。ネタバレです。というか、読んでないとなんだかわからないかも。
ライトは最後まで変わらなかったなあ、というのが私の印象でした。終盤、悪人ヅラをしていることが多くなりましたけど、でも変わらなかった。私ははじめからライトのことをアタマオカシイひとだと思ってました。
これ、連載前に読みきりで載りましたよね(13巻に収録らしいですが)。そっちではたしか、名前を消すと生き返る、ってことになってて、そのせいか「いい話」で終わってた、ような気がします(立ち読みだったので……)。別に「いい話」はたくさんは要らないなあ、という趣味なので、連載がはじまったときにも特に期待せずに立ち読みしたのですが(それでも立ち読みするんだな……)、主人公が異常だったので、よし!と思ったのです。で、たしか、第一回のラストにLがちらっと出てて、こっちがヒーロー、みたいなアオリが入ってたような記憶があります。主人公がこんなあぶない奴なのでフォローしなきゃと思ったんだな編集さん……と思ったのです。
ライトがどうなるのか、というのが、私の興味の対象でした。Lとのかけひきとか、デスノートによって世の中がどう変わるのか、とか、そういうのよりも、ライトがどうなるのか、が。彼の精神がどう変わるのか、そして、殺人を許容する――というよりも積極的に利用する「正義」の末路。
末路、だ。
ライトが望むような結末には至らないだろう、って予想してました。予想というより、それは私の望みだったのかもしれない。彼のことをオカシイと感じるってことは、私自身は彼とまったく相容れない思想を持っているということなので。
……とはいっても、彼がオカシイのは「悪人をみんな殺せばよい世界になる」と思っていることではなく、その考えが正しいのかどうか、まったく検討しないこと、なのだと思う。彼はあまりに「正しい」のだ。絶対的に自分が正しいと思っている。だから、自分の言うことがわからないのは馬鹿だ、と思うのだろう。他人にもそれぞれの「正しさ」があるという認識がないのだ。自分の正しさを認めさせるためには説得し洗脳しなければならない、ということを知らない。私の「正義」の考え方はニアと近い(この人も、あんまり好きじゃないんだが……)。Lはむしろライトに近いと感じていました。
なんか惨めに死ぬらしい、というのは知っていたので、実際に読んでみても、まあ、ふつうに、順当に、終わったねえー、という感じだったのですが。
思えばこの一貫性はかえってすごいのかもしれません。自分のやっていることをまったく疑わない。
ああ、でも、そもそもは退屈しのぎだった、ということは、忘れてたかもしれませんね。ネタにマジになりすぎましたか。リュークはさすがに退屈しのぎだって忘れてませんでしたが。
伊出さんが「ニアが負けてたら自分たちは死んでたから、だからこれでよかったのだ」って言ってて、そういう感覚は大事かも、って思いました。
しかし、ミサミサはどうなったのだー。ライトよりむしろ彼女のほうが気になってたのですがっ。彼女もへんな人であった。だんだん都合のいいだけのキャラクタになっていったのが残念でしたが。


キラのやり方は、あれは一般的にはテロリズムと呼ぶのではないのかなあ、と、このあいだからちょっと思っているのですが。テロリズムの定義がよくわからん。というか、そもそも定まってないのか。
まあ、テロかどうかってのはどうでもよくて、テロだろ!って言ってしまえば「キラは悪」って洗脳しやすいかと思って。
キラに支持があるっていうのが、わからんのですよね。作中でも現実でも。
ライトっていかにも育ちのいい苦労知らずのエリートでしょう。なんというか、過去がない。魅上照のような、小さい頃から「悪いこと」をする奴と戦ってきた、というようなエピソードが、ない。なんかへんなノート手に入れたので世の中変えましょうっていきなり殺人、ですよ。無実の人を殺してしまったら死ぬ、という覚悟もなかった。っていうか、これだけ殺してれば無実の人もたいそう殺してるよね。まあ、それを言っちゃったら、捜査側の人もたいそう殺してるので、いまさらですが……。


デスノートで人を殺したら有罪になるかって質問、連載開始頃に人力検索でありました。

質問文中にデスノートって書いてないので前に探したときには見つからなかった。
ついでにデスノートについて前に書いたやつ→りんご好きの死神