新しい職の創出

(前略)人が自殺するたびに、はっきりした理由を見つけなければならないとすると、大変なことになる」

「警察の中に、《自殺係》を作らなければならないでしょう」

「《自殺係》の仕事は、自殺者の心理を推し量り、それを第三者にわかるように明確に文章化することだ。文学者的な資質が求められるだろうね」

それはおもしろそうな仕事だな!と思ったけど、他人のことを考えるのは苦手だよなあ、私。苦手だし、他人の心情はあんまり想像しないことにしている。なので、《自殺係》をやるとしたら、まるっきり創作だよ! ……それはそれでたいへんだな……。まあ、そもそも、文学者的な資質って、ホラ吹きってことだよね?
で、なんとなく、太田忠司の『月読』を想起したりする。
人が死んだら「月導(つきしるべ)」という物理法則に従わないモノが残る世界。「月読(つくよみ)」は、月導にこめられた最期の思いを読みとる特殊能力を持った人、なんだけど……

「月導に遺るくらいだから、きっとそのひとにとって一番大事な思いなのだと、みんなそう思ってしまいがちです。私はいつも、そういうことではないんだと説明してから月導を読むことにしています。月導からわかるのは、そのひとが死の間際に思っていたこと。ただそれだけなのだと」