「テンションおかしい(テンションは日本語で張力)」


A「……」
B「……」

A「……」
B「……」
A「はあい、今日のブログ通信簿でえっすっ」
B「うわあっ、テンションおかしいっ、いいじゃん、予想通りじゃんっ」
A「そう、予想通り、変化なし、です……」
B「先生手抜きだね」
A「つーか、先生がちゃんと見ているか、疑わしくなってくるね……」
B「いや、予想通りなんだし、すねなくても」
A「すねてません、マメ度はそろそろ上がるかと思ってたんだよ」
B「それは図々しいよ」
A「あっそ」
B「……なんか、ほんとうにテンションおかしいってか、キャラ違うよ?」
A「気のせいです、いっそ出版コードに徹底的に引っかからないように喋りましょうか」
B「出版コード?」
A「あ、違った、年齢推定キーワード」
B「ああ、その言い方、昨日もちょっと引っかかったんだけどさ、キーワード……単語だけなの、文脈まで読んでないの?」
A「うーん、どこまで文脈を読めるのか、技術的なことは、僕、知らない」
B「僕も知らない」
A「じゃあ、以上」
B「……ねえ、たんに機嫌が悪いの?」
A「もしかしたら僕たちの顔で十歳認定が出てるのかもしれないよ?」
B「ああ、まあね、絵は十歳だよね」
A「頷くなよ!」
B「わーん、今日の君、ほんとうにいやだよっ、酔っぱらってんのかっ」
A「まあ、絵のうまさはわかんないと思うよ、いまのコンピュータじゃ」
B「……技術的なことは知らないんじゃなかったの?」
A「いや、なんとなく、けど、絵に比べたら言語はだいぶかんたんだからね」
B「まあ、音声言語はともかく、書かれたことばははじめっからデジタルだからね」
A「とりこぼしがないし、扱いやすいよ」
B「……はあ」
A「ん、なんで疲れてるの?」
B「いや、君のせいだよ……」
A「でも、どのくらい文脈が読めるのかっつったら、ねえ……」
B「むずかしい?」
A「『就職活動』ってのが、二十代のブログで多い表現の例として挙げられてたけど、その『就職活動』を誰がしているのか、ってとこまで、わかるのかは……」
B「書き手本人かもしれないけど、子どもかもしれないし、孫かもしれないし、親かもしれない」
A「フィクションの登場人物かもしれないし、特定の誰かじゃない、一般論かもしれない」
B「書き手本人でも、昔話かもしれないし、老後の話かもしれない」
A「そうそう、ことばを抜き出したところで、それがどう書き手に関係することばなのかっていうのは、それだけじゃさっぱりわからないはずなんだよね」
B「まあ、それはわかるけど……このブログ通信簿の場合は?」
A「それは、明日、わかる! かも!」
B「なんで?」
A「ここで『就職活動』って連呼したから!」
B「……んん、何日か前にも、例として出てたじゃん、『就職活動』」
A「あれは引用文中なので」
B「……引用だってことは、わかるの?」
A「この場合はかんたんだよ、書き手が自分で『引用だよ』って印つけてるから」
B「いや、だから、『引用だよ』ってことばは通じるの?」
A「ことばじゃなくて、印です、コンピュータ向けに、定まった形式で書いてるので」
B「ふーん、その引用は抜かしてるだろうって仮説?」
A「うん、仮説」
B「まあ、たしかに中の人が書いた文章じゃないってことは、たしかになるけどさ」
A「うん」
B「引用するって決めたのは中の人だから、丸っきり関係ないって除外するのもどうかと思うよ?」
A「……それもそうか」
B「うん、言葉遣いについては完全除外でいいだろうけど、内容については……」
A「……うーん、それもそうか」
B「あと、『就職活動』って単語一個だけ、てのはポイント低いのかもしれない、関連する他の単語がいくつかある、とか」
A「ああ、そうか……とりあえず明日の結果だね」
B「っていうか、いつまで続くの、これ?」
A「とりあえず、十日分の結果は集めたいらしいよ」
B「……あと五日も僕らこんな話するの?」