「……」
「……」
「……」
「……」
「はあい、今日のブログ通信簿でえっすっ」
「うわあっ、テンションおかしいっ、いいじゃん、予想通りじゃんっ」
「そう、予想通り、変化なし、です……」
「先生手抜きだね」
「つーか、先生がちゃんと見ているか、疑わしくなってくるね……」
「いや、予想通りなんだし、すねなくても」
「すねてません、マメ度はそろそろ上がるかと思ってたんだよ」
「それは図々しいよ」
「あっそ」
「……なんか、ほんとうにテンションおかしいってか、キャラ違うよ?」
「気のせいです、いっそ出版コードに徹底的に引っかからないように喋りましょうか」
「出版コード?」
「あ、違った、年齢推定キーワード」
「ああ、その言い方、昨日もちょっと引っかかったんだけどさ、キーワード……単語だけなの、文脈まで読んでないの?」
「うーん、どこまで文脈を読めるのか、技術的なことは、僕、知らない」
「僕も知らない」
「じゃあ、以上」
「……ねえ、たんに機嫌が悪いの?」
「もしかしたら僕たちの顔で十歳認定が出てるのかもしれないよ?」
「ああ、まあね、絵は十歳だよね」
「頷くなよ!」
「わーん、今日の君、ほんとうにいやだよっ、酔っぱらってんのかっ」
「まあ、絵のうまさはわかんないと思うよ、いまのコンピュータじゃ」
「……技術的なことは知らないんじゃなかったの?」
「いや、なんとなく、けど、絵に比べたら言語はだいぶかんたんだからね」
「まあ、音声言語はともかく、書かれたことばははじめっからデジタルだからね」
「とりこぼしがないし、扱いやすいよ」
「……はあ」
「ん、なんで疲れてるの?」
「いや、君のせいだよ……」
「でも、どのくらい文脈が読めるのかっつったら、ねえ……」
「むずかしい?」
「『就職活動』ってのが、二十代のブログで多い表現の例として挙げられてたけど、その『就職活動』を誰がしているのか、ってとこまで、わかるのかは……」
「書き手本人かもしれないけど、子どもかもしれないし、孫かもしれないし、親かもしれない」
「フィクションの登場人物かもしれないし、特定の誰かじゃない、一般論かもしれない」
「書き手本人でも、昔話かもしれないし、老後の話かもしれない」
「そうそう、ことばを抜き出したところで、それがどう書き手に関係することばなのかっていうのは、それだけじゃさっぱりわからないはずなんだよね」
「まあ、それはわかるけど……このブログ通信簿の場合は?」
「それは、明日、わかる! かも!」
「なんで?」
「ここで『就職活動』って連呼したから!」
「……んん、何日か前にも、例として出てたじゃん、『就職活動』」
「あれは引用文中なので」
「……引用だってことは、わかるの?」
「この場合はかんたんだよ、書き手が自分で『引用だよ』って印つけてるから」
「いや、だから、『引用だよ』ってことばは通じるの?」
「ことばじゃなくて、印です、コンピュータ向けに、定まった形式で書いてるので」
「ふーん、その引用は抜かしてるだろうって仮説?」
「うん、仮説」
「まあ、たしかに中の人が書いた文章じゃないってことは、たしかになるけどさ」
「うん」
「引用するって決めたのは中の人だから、丸っきり関係ないって除外するのもどうかと思うよ?」
「……それもそうか」
「うん、言葉遣いについては完全除外でいいだろうけど、内容については……」
「……うーん、それもそうか」
「あと、『就職活動』って単語一個だけ、てのはポイント低いのかもしれない、関連する他の単語がいくつかある、とか」
「ああ、そうか……とりあえず明日の結果だね」
「っていうか、いつまで続くの、これ?」
「とりあえず、十日分の結果は集めたいらしいよ」
「……あと五日も僕らこんな話するの?」