振り返ってはいけない

ところで、こわい話って、夜読むとさらにこわいのはなんでだろう……とか、考えてた。こう、読んでて、後ろが気になるのって、昼はあんまりないけど、夜はよくあるんですよ……って書いてるいままさに、後ろが気になる……けど、振り返ってはいけないいいっ。

本を読んでいる途中に寒気がしたら、決して振り返ってはいけない。その時、あなたの後ろには死者が立っている。

夜が舞台のことが多いから臨場感がある、とかいうのとは、違うような気がする。
もともとが、単純に、夜はこわい、のではないか。それを思い出させられて、こわいんじゃないか、って思いついた。
人間は昼のいきものだから。
暗いのがこわい、というだけでなく。灯かりがついてても、こわい。いや、本を読んでいるときにはぜったい灯かりがついてるはずなのに、こわいじゃないですか……。


こういう、振り返ってはいけないのに登場人物がことごとく振り返ってしまうのはなぜか、というの。

 誰もが“怪異”に対して、問題行動を起こす。怪談などでセオリーのように行われる、一人で行動する事、深入りする事などが危険だと判っているのに、誰もが同じよう愚行を繰り返すのだ。

 愚かさ、好奇心、恐怖、信念、義務感…………理由は様々だが、皆同じように愚行を行い、巻き込まれる。

 究極的には関わらなければ回避できるのに、誰もそれをしない。皆それを知っているのに、自ら傷を広げる。

 亜紀も百も承知でいながら、過去に性格的な部分から同じ事をしてしまった。

 そして助けられた今、亜紀は思う。

 もしかして、それが“怪異”なのではないかと。被害者の性格、行動、それに至る理由など、全てを含めて“怪異”なのだ。

 愚行に至る理由、信念、精神性、それらの深い部分に、怪異は取り憑く。

 例えば、いつか“黒服”が言っていた。

 ――――“怪異”は心の奥底、潜在意識のさらに奥からやって来るものだ。

おもしろい。この、“怪異”は心の奥底、潜在意識のさらに奥からやって来るものというテーマは、次作「断章のグリム」に引き継がれてますね。