成巽閣

ところで、べつに中学生ウォッチングでうろうろしていたわけではなく、目的は成巽閣(せいそんかく)でした。幕末に兼六園に隣接して建てられた、藩主のご母堂のご隠居所です。
恩田陸ユージニア (角川文庫)』を読んでから、行ってみたいと思ってたんですけど……読んだの二月だったような……。
作中、兼六園について、こんな風に語られてる。

 でも、さすがに日本三大庭園と言われるだけのことはあるわ。この広さ、スケールの大きさ、行き届いた管理、変化に富んだ内容。緑が濃くて、猛々しい感じすらある。
 権力というのは凄まじいものね。こんな凄まじいもの、今じゃ誰も造れないでしょう。もちろん素晴らしいわよ。美しいし、文化遺産として誇らしいし、日本人の精神的よりどころとして必要なものだとは思う。でも、しょせんは、庭なのよ。農地とか、学校とか、用水路じゃない。こんなものを造ってしまう権力って、しかもそれを数百年も維持していく執念って、やっぱりどこか、あたしたちの理解を超えているような気がする。

ちなみに、作中で「兼六園」「金沢」って固有名詞は出てこないんですよね、なぜか。「成巽閣」は出てたのに。
で、成巽閣。入館料700円(なんで入ったことないんだろうと思ったら、たぶん、この値段のせいだ……)。

外観はあんまりぱっとしないけど、ええ、こんなご隠居所を建ててくれる息子が欲しいな、と思いました。昔の日本家屋っていう先入観を持ってたので、入って、あれっ、って思いました。どことなくモダンな感じ? けど、照明器具(シャンデリアっぽいのとか)のせいかもしれない……これは当時のものではあるまい……。
けど、中は撮影禁止なんだ……!
で、肝心の群青の間。これまた、あれっ、って思いました。なぜなら壁が青くなかったから。朱色なんです。青いのは天井だけ。こんな感じの配色だった。

うろおぼえー。
隣りの書見の間は壁が紫なんですけど。で、天井が青で、床の間の壁が緑だった……ような……。
まあ、それにしてもはっきりとした青なんです。ウルトラマリンブルー。これは塗り直しとかしてるのかなあ。ぜんぜんわびさびの日本文化の色じゃない。それもそのはず、輸入品らしい。ラピスラズリ、非常に高価で貴重なんだそうで。日本に輸入された最初かごく初期のものと考えられているそうです。権力って! まあ、前田さんちとしては、最後のほうの権力行使になるのでしょうが。