夏休み

恩田陸蛇行する川のほとり〈1〉』。

 夏休みが始まった頃は、いつも目の前に無尽蔵な時間があるような錯覚に陥る。
 庭に干した布団の、乾いたお日さまの匂い。これから何にでも使えるはずのカレンダーの余白。まだ開かれぬ白いページ。これからできること、したいことの幸福な予感でいっぱいだ。それが幻想であると、あとひと月もすれば思い知らされるのに、毎年同じ幸福感で満たされるのだから、人間とは、なんて単純で進歩のない生き物なのだろう。夏休みの入り口が幸せなのは、何かができるからではなく、何かができるはずの時間があると信じられるからなのだ。

私は宿題のない長い夏休み中、終わりは未定。
……宿題ぐらい出したほうがいいんだろか……。なんでそう、自分に義務を与えたくなるのかな……。