鍵と錠

スタニスワフ・レム虚数 (文学の冒険シリーズ)』を、無理やり、読み終える。難しいんだもん。おもしろいけど。

一つの新しい鍵があって、それが十分普遍的であれば、多くの錠前を開けることができるから、天才は諸君には万能であるように見える。だが、天才の創意の豊かさの程度は、彼がどのような鍵をもたらしたかにはあまり左右されず、むしろその鍵を差し込むべき、諸君に対し閉ざされた問題の方に、かなり依存しているのである。誹謗者の役目を引き受けて、私はさらに、哲学者たちもまた鍵と錠前の問題にかまけていると言うこともできるであろうが、しかし彼らは鍵に合わせて錠前を作るのであって、彼らは世界を開くのではなく、鍵で開けられるような世界を要請しているのだ。

私が自分が存在する以上は、この存在が何であり、それがどこで生まれ、それが私を導いていく先では何になりうるのかを知りたい。世界を欠いた〈知性〉は〈知性〉を欠いた世界と同じように空虚であり、世界が完全に透明に見えるのは信仰の短い瞬間のときだけである。

機械による、人間への、講義の、記録。