「昨夜、蛍を見たような気がするんだよね……」
「……夢?」
「夢じゃないよ!」
「じゃあなんで自信なさげなの」
「緑ゆたかな田舎の清流とかじゃなくて、まちなかの用水路だったからだよ!」
「……夢?」
「夢じゃないよ! こう、小さな光が、点滅しながら、点々と……たまにふよふよ動いたりして」
「……夢?」
「でも、じつは僕、蛍をナマで見た記憶っていうのが、ないので、初めて見たのかもしんない……」
「夢じゃないの?」
「……夢じゃない、と思うので、つっこまないで!」
「夢じゃないのにつっこんじゃだめなの?」