「こんにちは! 今日はまんじゅうがこわい氷室の日です!」
「……なに、それ」
「むかし、前田さんちが徳川さんちにお中元を贈っていた日なので、庶民はまんじゅうを食べます!っていう日です」
「……なに、それ」
「じゃあね、えっと、上様がかき氷を食べるので庶民はまんじゅうを食べます!っていう日です」
「……だからなんなんだ、それ」
「えーとね、江戸時代に、氷室に蓄えておいた氷をはるばる加賀から江戸まで送って(リアル飛脚クール便です!)、献上してたんだけど、無事届きますように、って神社にまんじゅうをお供えしてたのです。それで、無病息災を祈ってまんじゅう食べる日になりました」
「氷室まんじゅう、っていっても、これ……」
「ふつうの酒まんじゅうなんだよね。白、赤、緑の三色展開してたりもするけど、味は同じだと思う」
「氷室で冷やしておいたりは」
「しないです。献上してたのが旧暦の6月1日?なのかな? なので、氷室開きはその4日前ぐらい?」
「将軍さん、かき氷食べるの?」
「いや、かき氷かどうかは知らん……」
「前田の殿様はかき氷食べるの?」
「どーなんだろう、自分の手元にも残しておくものなのかなー。それとも残しておいたのを知られたら将軍さんに怒られるんだろーか」
「自分にお中元贈ったっていいじゃん! 自分チョコってやつだよね! つまり自分氷! 氷のように冷たくて、でも最後には融けてなくなってしまえという呪い! わあ!」
「……えーと、自分でなに言ってるかわかってますか……」
「呪いで幕府はなくなったんだね!」
「徳川さんは残ってるよ!」
「え、だって、幕府はないじゃん。加賀藩から徳川幕府への贈り物なんでしょ?」
「……うーん、そう、説明されるんだけどねえ、なんとなく、ニュアンス的には、前田さんから徳川さんへ、のような気がするよ。庶民からみたら、うちの殿様からお江戸の上様へ、っていう」
「気がするんですか」
「気がするんです」
「……」
「……いやー、だって、公式に命じられてやってたことじゃないだろうし……」
「そんな、公私を分けるなんて発想があったかなあ。徳川さんの姫様は何人か前田さんちに嫁にきてるみたいじゃん。それって、『公』か、『私』か?」
「それもそーなんだけどさ。いまの感覚で、藩っていう行政単位が幕府という中央に統括されている、って捉えると、とりこぼすものがあるとは思うな」
「そう?」
「だって、この当時、『国』っていったら『日本』じゃないでしょう?」
「あ、僕の国はどこにあるんだろう、探しに行かなくちゃ……」
「えっ」
氷室跡は兼六園にあります。うまい写真がない……この写真の奥のほうだと思うんですが。なんとなく暗いせいか、いつも人通りがありません……。