このあいだ、Amazonを騙るメールがきまして、どこがおかしいっていちばんに気づくかというと、日本語がおかしい、ってことですよね。内容を云々する前に。しかしこの観点での判別はそのうちできなくなるんだろうな。
と、いうのは、機械翻訳の向上を念頭において考えているわけですが、それ以前に、日本語母語話者が校正すればすぐ直る。にんげんのほうが日本語得意よ! なんでそうしないのかしら。コスト? コネ?
ふつうの猫
「かわいいような、図々しいような、何も考えていないような、賢いような、まあどこにでもいる普通の猫ね」
松尾由美『ニャン氏の事件簿』(ISBN:9784488439088)
「じゃあ猫の関心事っていうのはどんなものですか」
佐多がたずねてみる。だいたい答えはわかるような気がしたが、
「ニャーニャ、ニャニャンニャ、ニャーニャニャニャニャーニャーニャニャ」
「おいしい食べ物、快適な寝場所。そしてそれらを可能にするための利潤の追求だニャ」
じぶん
自分という人間の大半は、本人の意見や選択がおよばないところにある。
デイヴィッド・イーグルマン『あなたの知らない脳──意識は傍観者である』(ISBN:9784150504755)
「確かにね。でも自分の体も魂も、そんなに信用に値するものだろうか?」
(中略)考えてみれば自分の心も体も、だだ自分というだけだ。そんな場合でなくてもお腹は減るし、眠くもなる。そんな自由にならない部分は、確かに自分の中にいる虫のようなものだ。
お腹の虫。癇癪の虫。昔からそんな言い方もする。
甲田学人『断章のグリム〈9〉なでしこ〈下〉』(ISBN:9784048674201)
主食
「喫茶店に行って、悩むじゃない。生クリームのケーキとモンブランとどっちがいいか、って」
「俺は間食をしないからな」
黒澤がいうと、若林絵美はのけぞるほどに驚き、「そんな人生に何の意味があるのか」となじり、「いっそのこと、ケーキを主食にしなさいよ」と言い切った。
伊坂幸太郎『首折り男のための協奏曲』(ISBN:9784101250311)
おやつとは健康食品ではない。昌子はそもそも医者だが、甘い物は特別なのだ。男にとっての酒と同等の、ストレスを発散してくれる妙薬と考えている。そしてそれは、女だけの秘密なのだ。
浅暮三文『無敵犯 刑事課・亜坂誠 事件ファイル101』(ISBN:9784087455281)
頭のなか
私は一日一二時間、パソコンと過ごしているので、自分の脳の断層写真を見たとき、少々突飛だが「自分の頭の中にコンピュータが入っていなくてよかった」と安心した。むろん、MRIのオペレータが気をつかって、適当に他の人の脳の画像と置き換えてくれた、という可能性はゼロではないが。
石黒浩『ロボットとは何か――人の心を映す鏡』(ISBN:9784062880237)
いいわけ
だれかの上におっこちてしまったとき、そんなつもりはなかったんだよ、というだけではことばがたりません。なにしろ、相手だって下になるつもりはなかったでしょうから。
A.A. ミルン『クマのプーさんエチケット・ブック』(ISBN:9784480429544)