文学美少女ぼく

ロボ

ロボットが感情を持ったら、私たちはつまらない雑用ばかりさせるのは申し訳ないと思ってしまい、ロボットが部屋に入る前に掃除を始め、散らかっていてごめんなさいと謝ったりするのだろうか。マイケル・S・ガザニガ『人間とはなにか 下 脳が明かす「人間らし…

二億円

「それにしてもいいですよね、二億円は。本当、二億円は素晴らしいです。二億円くらいの二億円って、二億円の他にはないですよね。こんな美しい二億円を見せられたら、今日も一日がんばろうという気になります」西尾維新『掟上今日子の推薦文』(ISBN:978406…

問題ない

暗黒時代に失われたものは、秩序だけではなかった。かつての西ローマ帝国では、教会が規範と教育をもたらしていた。しかしこの時代には、司教や修道院長の多くが金と権力に眼を奪われ、精神修養や教育には関心を示さなかった。司教同士の勢力争いが高じて、…

おはよう

「ああ、おはようございます、男爵。いやあ、いい朝だ、いい朝だ、まったくいい朝だ! よくお休みになったでしょうな? それはよかった。『城を戴くドラッケンフェルズの断崖絶壁、睨みおろすはうねり狂うラインの河水』ですかな」ジョン・ディクスン・カー…

お布団さん

これは大事なことだから皆に伝えたい。 ふかふかの布団の中は、この世の天国である。加藤元浩『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』(ISBN:9784065146965) 「考えてみれば……布団は私が生まれた時から温かく見守ってきてくれたんですよ」 「そういうものだ…

神妙

「寝る前に計ったところで、起こってしまった結果に対しては、もうどうしようもない。ただ後悔に苛まれながら寝るだけだ。しかしこれが朝ならば、何とかなる。今日一日の方針が立てられる。未来への希望だ」高田崇史『QED 出雲神伝説』(ISBN:9784062774505…

かたよった世の中

「世の中のイケメンセンサーをなめてはいけません! カッコイイ男を年配から幼児まで客はしっかり皆見てますよ!」 喜多尚江『ピアノの恋人ppp』2巻(ISBN:9784592217879) 日本でいちばん人気のある球団は埼玉西武ライオンズ。という世の中。 あと、大河ド…

血とインク

「血を採るのは痛くない」ファルークはなだめにかかった。「ぜんぜん痛くない注射なんだ」 「注射は痛いに決まってる」ヴィノドは言った。 「ほう、注射が怖いんだね?」ファルークは小人に訊いた。 「この血はいま使ってるんだ」というのがヴィノドの答えだ…

読解力

去年の2月末。 「これは外国人たるわれわれには、想像外の読解力ですね。ハイク以上です」山田風太郎『明治十手架〈下〉―山田風太郎明治小説全集14』(ISBN:9784480033543) べつに狙って連作になってるわけじゃないの……。2枚目を描いたあとの読書中に「ハイ…

人をいやす

私は牧野修さんの坊主頭がうらやましくて仕方ない。それというのも、私はこれまで何度も妙齢の――あるいは妙齢ではない――女性作家たちがさも愛おしげに牧野さんの坊主頭を撫でるのを目撃しているからだ。「いやされるのよ」――と恍惚とつぶやいた女性作家さえ…

やる気まんまん

「こっちにだって、やりたいことはあるよ」 「お前が? 何じゃ」 「よくわからんが……とにかく、やりたいことはあるような気がする」 山田風太郎『明治断頭台』(ISBN:9784041003428) ↑2019年1月2日。 あれ、去年、そんなこと言ってたんだ……? ちなみにこの…

台形

「君 一体どうなりたいのよ」 「図形で例えるなら台形みたいな大人になりたいね」 カネタケ製菓『ストロベリー・ゴー・ラウンド』(ISBN:9784253130929) 定義上たしかに台形だけど、立派な台形だとは言いたくないこの気持ち、なんなのかしら……?

悲観論

例えば、わたしは十七年前にくらべて、少なくとも三つや四つ年を取っているのではないだろうか。もっとも、そう感じるのは持ち前の悲観論のなせる業でしかないかもしれない。 アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会5』(ISBN:9784488167134) 2018年12月19日↓

家電

「洗濯機くらい使えるよ……水と洗剤を入れてからボタン押すだけだろ」 「その発言でもうアウトだよ」 「…………」 古宮九時『死を見る僕と、明日死ぬ君の事件簿』(ISBN:9784048935258) むろんグレーは答えない。彼に出来るのは冷やすか凍らせることだけだ。男…

エウレカ!

「ほらね、外の証拠など求めるべきじゃない――そうとも、推理力だけで充分なんだ。とはいえ、人間は弱いもので、自分が正しい方向に進んでいるとわかれば励みになる。ああ、わが友よ、とてつもなく元気が出てきましたよ。走って、跳びまわりたい気分だ」 そし…

本気

「本気ってどうすれば 出したり引っこめたりできるの?」 藤巻忠俊『ROBOT×LASERBEAM』2巻(ISBN:9784088812175) たぶんその引き出しには鍵がかかっている。

とある業界

不可解なほどふつうだった。タールマカダム舗装もふつう、空気もふつう、なにもかもふつうだ。それなのに、バーミューダ・トライアングル業界がまる十年は食べていけるほどの数の人間が、ものの五分のうちにぱっと消えてしまったのだ。 ダグラス・アダムス『…

鼻はその外観も機能もすべてにおいてローマ時代の崇高な香りがする。 ジェニファー・アッカーマン『かぜの科学 もっとも身近な病の生態』(ISBN:9784150504212)

人間は、自分の手のことは「わたしの」と言うが、自分の脳のことは「わたし」と言う。このイメージは、自分の小さな分身が眼球の後ろにある制御室でレバーを操作しながら身体を操っているという感覚にぴたりと一致する。 ブライアン・クリスチャン『機械より…

物貼欲

人間とは物を貼りたがる動物である。 泡坂妻夫『奇術探偵 曾我佳城全集 上』(ISBN:9784488402242) 千社札は、信仰から始まった風俗だと言われるが、純粋な信仰心だけだろうか。信仰にかこつけて、物を貼りたいという欲望を満たしている人も多いに違いない…

バナナの皮

人生には、ときには暗く寒い夜の底を歩き続けなければならないこともある。しかし、暗ければ暗いほど、寒ければ寒いほど、その足元にバナナの皮が落ちていたときの喜劇的効果は大きい。あるいはこうもいえる。どんなに暗く寒い夜にも、バナナの皮が闖入する…

ねこ

猫というのはそもそも、何でもわかっているようなしゃあしゃあとした顔をしているものだし。 松尾由美『ニャン氏の童心』(ISBN:9784488439095) 猫の肉球で頬を撫でられたような蠱惑的な声だった。 麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』(ISBN:9784101212814) た…

共感

サバクツノトカゲは目から血を噴射し、1.5メートル先の距離まで飛ばすことができる。サバクツノトカゲが何のためにこんなことをするのか、私は知らない。というのも私は、なにかの記事でこのトカゲが「目から血を噴射する」と書いてあるのを読むたびにそこで…

高貴な態度

「ですが、不可能状況を分析するときに」ペティスが割りこんだ。「どうして探偵小説を論じるのですか」 「なぜというに」博士は素直に認めた。「われわれは探偵小説のなかにいるからだ。そうでないふりをして読者をたぶらかしたりはしない。探偵小説の議論に…

シヌール神父はさらに眉を上げた。イヴェットを見ると、彼女も眉を上げていた。 さあ、みなさんも眉を上げよう。 ジャック・ルーボー『麗しのオルタンス』(ISBN:9784488188023) 「気にすること無いですよ 大抵の女の子は一度は眉毛を抜きすぎて平安貴族に…

キャベツ

前に、キャベツと国王を並列させた文を引用しましたが。 ymd-y.hatenadiary.jp アガサ・クリスティー『複数の時計』(ISBN:9784151300295)でポアロさんが『鏡の国のアリス』を暗唱してまして。 さあ、時は来たぞ、とセイウチは言った、 いろんなことを話し…

永遠の夏休み

「わたくしは生まれてからずっと夏休みを過ごしていた人間よ」 小泉喜美子『月下の蘭/殺人はちょっと面倒』(ISBN:9784488486112) まあ言ってみたいセリフよね。現実はともかく。

ぐうたら

「そうです、セイラーのいちばんよいところは、彼がぐうたらであることです。セイラーはほんとうにぐうたらなんです」 私は耳を疑った。自分がぐうたらであることを否定する気は毛頭なかったが、それが私のいちばんよいところだというのか? 私は手と首をぶ…

ハレンチ

電子がある点から他の点に直接行く以外に、しばらくまっすぐ進んだあと突然光子を放出し、自分の吐きだしたその光子を、こともあろうにまた吸収するというのがその経路の一つです。何となく「ハレンチ」に聞えるかもしれませんが、電子がその通りをやるのだ…

持ちもの

莉英には、家が広いことも狭いことも、どちらが立派で、どちらが貧しい、という観念がない。ただ単に、持っている道具を収納し、管理する面積が必要なだけだ。 森博嗣『月は幽咽のデバイス』(ISBN:9784061821095) 「ああ、荷物は住処の面積にあわせてウィ…