熊と数学

うちのクマ(ぬいぐるみのひと(ひとじゃない))がびみょうに傾いているのは仕様なんだろうかと思いながら次に読む本を物色していてなんとなくテリー・ビッスンの『ふたりジャネット (奇想コレクション)』を手にとったのですけど、考えてみれば『読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド』で北上次郎さんがこの本について「熊が席をゆずるところしかおぼえてない!」と言っていたからであった。た、たんじゅんすぎる……。というわけで買ってから一年経ってようやくこの短編集を読んだのでした。
……たしかに熊は席をゆずったよ……!
「熊が火を発見する」という話。
熊は火を発見したんだよ……!


そしてへんな中国人がへんな数式を持ち出してへんな理論をまくしたて、へんなのにも関わらず事態を収束させるという技を披露するものだから、せっかく小川洋子の『博士の愛した数式 (新潮文庫)』を読んで「ロマンス数学」モードの頭になってたのに「なんちゃって数学」モードに切り替わってしまった。

「漢字はどういうことだ?」おれは訊いた。
「多元文化共働だ」ウーはいった。「スーパーストリングの軸上の遠隔反エントロピー的場の相対的線形安定性の計算を、ラクダが水を飲めるように井戸の毒を沈殿させるための古代天山の呪文と組みあわせたんだ。学校で習ったちょっとした裏技さ」
「医学校でか?」
「隊商学校だ」とウー。「もちろん、一時的なもんだ。効き目は二、三千年しかつづかん。それに反エントロピー的場逆転装置を使わなけりゃならん」