三人称→一人称変換

桜庭一樹の「荒野の恋」(既刊→『荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)』『荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)』、第三部で完結予定)。
山野内荒野という女の子の、恋のお話。タイトルどおりですな。で、荒野視点の三人称で描かれるわけですが。地の文で、人々は荒野が使う呼び名であらわされる(「パパ」とか、「神無月くん」とか。途中で呼び方が変わった人は、地の文でも変わってる)。荒野は自分のことを「荒野」って呼ぶ(ことがある)。ので、これはもしや一人称としても読めるのではないか?と気がついた。「荒野は、」って書いてあるところを、「私は、」って言っているように読めるのではないか、と。で、やってみた。
……。
やっぱり三人称は三人称でした……。
平日の朝の蓉子さんは、元気すぎる、と思いながら荒野は、眠そうに、第二部)なんて、一人称だったらない。それに、一人称だったらもっと主語を省略するだろう。荒野が自分のことを「荒野」って呼ぶ場面も、思ったより少なかった。特に、第二部ではほとんどない(成長したのか……)。視点人物によりそった、近しい、親しい文体なのだけれど、それでも一人称よりは距離をもった、客観的な文章なのだ、と、気づいた。
けど、このへん↓とか、一人称だと思って読むとなかなかいいな。

「……うそだ」
 荒野は、ほんとだ、と思いながら言う。

いまいやなことは、大人になってからも変わらない、という確信が荒野にはある。

家に属する。そういう覚悟が、荒野という女にはあった。

では。
またちょっと違うことを企む。成長した、大人の女の荒野が語っている、と、読んでみたらどうだろう。一人称だけど、二人称のような三人称のような。
…………。
……それもまたびみょうだ……?