バカだけど頭はわるくない?

甲斐谷忍の『LIAR GAME』についてもう一度。いや、昨日、「おもしろいから読むがいいよ」とか、さらっと書いちゃって、……む、ちょっとさらっと書きすぎだろう、って気がしてきたのだ。
オビに、「際限なく湧き起こる欲望と人間不信!」てあるんだけど、それはちょっと、けっこう、違う……と思う。見知らぬ人間同士で騙し合い、金を奪い合うんだからそういう方向へいって不思議はない、というか、そうなるだろうに、なんか、ずれてる。その原因は、主人公がバカだからである。
……あ、バカ正直、か。
けど私は、この子はバカ正直っていう以前に、たんじゅんにバカなんじゃないかなあ、と、ずっと思ってて、巻が進むうちに見直していったとはいえ、まあ、知略をめぐらせるたぐいの頭の良さはさっぱりない。
と、いうあたりが、彼女の強みらしい。
正直な子になるように、と、つけられた名前は直(ナオ)。
何度騙されても、次は騙されないようにしよう……とはあんまり思ってないっぽい。騙されやすいという自覚だけはあるようだけど。同じ人に何度も騙されたりしている。じゃあ、何度騙されても人を信じようっていう、覚悟とか……悲愴感があるかっていうと、それはさっぱりない。だから、たんに学習してないだけ、に見える。のだけれど、そうでもない。ひとが考えないようなことを、考えてる。3巻で見せた思考の転換は、見事だった。
へんな子だ。
で、こんな調子でどうして勝ち残っているのかといえば、巨大マルチを騙して壊滅させた詐欺師・秋山をひきこんだから……である。この人は詐欺を生業としているわけではないから、正確には詐欺師ではない、マルチ壊滅には個人的な事情があったんだけど、まあ……いい人?なので、危なっかしいナオをほっておけない。ナオはナオで、彼になついてしまっている(としかいいようがない現状)。
最初、秋山を巻き込むためにナオが使われたのかと思ったけど、いまでは逆にも思える。ナオを勝ち残らせるために秋山が使われた、ように。
ライアーゲーム事務局は何を企んでいるのか? 金儲けでないことはたしかだと思う、支払い能力のない人間をはめたってしょうがない。秋山は、それをつきとめるのが目的になっているけれど、その答えに近づけるのはナオのほう……だろうな。で、ナオの目的は、といえば……秋山を巻き込んでしまった責任を感じているので、彼をゲームから抜けさせたい……が、本人から抜けるつもりはないと言明されているから、……どうするつもりなんだ? 他のプレイヤーのほとんどは、ゲームの前からお金に困ってたし、ゲーム中にも負債を抱えてしまったので、やっぱり、儲けたい、のだ。だから、ナオの言う、「儲けようとする人がひとりもいなければ誰も損をしない」、というのは、難しい。そこのところも、どうするのかな?ってところ。
じつのところ、私はナオが(女の子としては)あんまり好きではないんだけど(仕草が、なんとなく……)、主人公はこの子でなければならない、って感じは、強く、する、そこがおもしろい。
ゲーム自体も、おもしろい。1巻は対戦相手が弱いのでちょろいことになってるけど、2巻は非常に緻密。

  1. LIAR GAME 1 (ヤングジャンプコミックス)
  2. LIAR GAME 2 (ヤングジャンプコミックス)
  3. LIAR GAME 3 (ヤングジャンプコミックス)
  4. LIAR GAME 4 (ヤングジャンプコミックス)