他意がない人たち

「でも、三年生の三奈子さまがわざわざいらっしゃるとは」

 よくよく考えてみると、これは「上級生のくせに使いっ走りにされているんですか」という皮肉にもとれるわけだが、あいにく祐巳はそういう技術を持ち合わせていないので、言葉通りの意味しか含んでいない。先週の号外は例外かと思っていたが、卒業直前になって新聞部に完全復活したのだろうか、と。

「後輩たちは忙しくしているから、手伝いをかってでたのよ。というか、むしろ押し売りって感じかな」

 そして築山三奈子さまという人も、その辺あまり感受性の鋭い人ではないらしく、言葉通りに受け取って、ただ普通に答えを返すわけである。平和だ。由乃さんや乃梨子ちゃんが、ハラハラしながら聞き耳を立てていたなんてこと、どちらももちろん気づいていない。

……いや、うん、平和だ。いつでもこういけばいいのに。