「六本木ヒルズ、森美術館です!」
「夜の六本木! 似合わない! よく捕まえられて展示されなかったね!」
「なに言ってるの! ちょう似合いまくりだよ!」
「……」
「……ごめんなさい!」
「で、何を見てきたの?」
「『医学と芸術展』というのをやってたのです(注・この展覧会はもう終わってます)。でもねえ……」
「なに?」
「あんまり印象に残ってないというか、うまくネタを拾えなかった……」
「とっとと書かないから……」
「生と死のなんたらかんたら、というテーマだったんだけど。翌日に動物園で時間について考えてたときのほうが、よっぽどそれっぽいことを考えたような……」
「君は肉体というものを軽視しすぎだね!」
「そ、そんなことは」
「中と外、って話をしてたでしょ」
「うん」
「で、どんなに中と外を相対化しようとも、中と外の区別がつけられる、というか、区別をつけてしまう、のは、身体があるからだよ」
「……む、そうか……?」
「そうだよ! 身体は、ここが夢なのか現実なのかを知っている」
「ふうん」
「……これは?」
「ホワイトデーのなんたらかんたら、という看板が出てたのはこのスペースのことだと思うんだけど」
「…………わはははははははは!!!」
「なんで笑うの!?」
「君だってこれ見たときは笑ったでしょ!」
「笑ったけど!」
「これで夢心地にはなれないよね!」
「いや、これで夢心地になれる人は世の中のどこかにはいるんだよ、きっと……」
「あはははは! 夢心地になれる人がいると思ってる人しかいなかったりして!」
「あんまり笑うと僕がわるいことした気分になっちゃうよう」
「気にするな!」