みやげばなし・そのはち

A六本木ヒルズ森美術館です!」

B「夜の六本木! 似合わない! よく捕まえられて展示されなかったね!」
A「なに言ってるの! ちょう似合いまくりだよ!」
B「……」
A「……ごめんなさい!」
B「で、何を見てきたの?」
A「『医学と芸術展』というのをやってたのです(注・この展覧会はもう終わってます)。でもねえ……」
B「なに?」
A「あんまり印象に残ってないというか、うまくネタを拾えなかった……」
B「とっとと書かないから……」
A「生と死のなんたらかんたら、というテーマだったんだけど。翌日に動物園で時間について考えてたときのほうが、よっぽどそれっぽいことを考えたような……」
B「君は肉体というものを軽視しすぎだね!」
A「そ、そんなことは」
B「中と外、って話をしてたでしょ」
A「うん」
B「で、どんなに中と外を相対化しようとも、中と外の区別がつけられる、というか、区別をつけてしまう、のは、身体があるからだよ」

A「……む、そうか……?」
B「そうだよ! 身体は、ここが夢なのか現実なのかを知っている」
A「ふうん」

B「……これは?」
A「ホワイトデーのなんたらかんたら、という看板が出てたのはこのスペースのことだと思うんだけど」
B「…………わはははははははは!!!」
A「なんで笑うの!?」
B「君だってこれ見たときは笑ったでしょ!」
A「笑ったけど!」
B「これで夢心地にはなれないよね!」
A「いや、これで夢心地になれる人は世の中のどこかにはいるんだよ、きっと……」
B「あはははは! 夢心地になれる人がいると思ってる人しかいなかったりして!」
A「あんまり笑うと僕がわるいことした気分になっちゃうよう」
B「気にするな!」