「国立新美術館です!」
「……ん?」
「の、天井です!」
「天井……何がしたかったんだね君は……」
「それで、これがえんそくのしおりです! 見るからに僕専用でしょ! いいでしょ!」
「えっ……これって、もしかして、僕じゃないの?」
「なに言ってるの! ここにちゃんと『ぼく』って書いてあるじゃん!」
「僕だって僕だよ!」
「……」
「……まあ、君が僕のを着服したんだとしても、僕は寛大だから許してあげようじゃないですか」
「違うもん!」
「で、それ、中身は何?」
「えっと、旅程と、路線図と、美術館の開館時間とか、あと、まあ、ほとんど、地図」
「地図……方向音痴で地図が読めないくせに……」
「うん、あんまり役に立たなかった……けどさあ、こんなんでも、つくろうとすればけっこうめんどくさいんだよ! やってみるがいいよ!」
「めんどくさいから嫌だよ!」
「いんたーねっとというもののおかげで、昔にやろうとするより格段にかんたんになってるはずなんだけど。世にガイドブックがあふれてて、旅行代理店というものが存在する意味が、とってもよくわかった」
「よかったね」
「……」
「よかったね!」
「よかったのかどうかはともかく、次はもうちょっとおもしろみのあるしおりをつくるよ!」
「……よかったね……」