「それじゃあ、本題に戻りましょうか」
「本題があったの?」
「お土産話をしてたんだよ!」
「いつ!?」
「バスが早朝に東京駅に着いちゃうもんだから、そのへん歩いてたんだよね。丸の内とか、霞ヶ関とか、永田町とか、そのへん」
「丸の内の丸って、何?」
「えっ……お城のこと、か?」
「まあいいけど。通勤途中の人々にまじって、なぞ生物の君が歩いてましたか……」
「僕はまったくなぞじゃないし! ふつうです! ぜんぜん浮いてない!! けーしちょうとけーさっちょうです!」
「……」
「……堂々としてればだいじょうぶなの!! 首相官邸です!」
「ど、どこが?」
「この塀の中が。地図を見た限りでは、そのはずなんだけど」
「守られてるんだか隔離されてんだかわからんな……」
「たいへんだよなあ、中の人も外の人も」
「ところでいまの首相って誰?」
「……」
「……」
「……いや、僕はなぞ生物だから……。新橋のへんです!」
「なんか飛んだ?」
「いや、歩いてたんだけどね、人波に流されてカメラを構えられなかったというか、あんまりものを見る余裕が……っていうか、東京ってスターバックス多すぎだよね!」
「そうなの?」
「そうなのさー。100メートルに一軒くらいない?」
「他のコーヒーショップチェーンと混同してるのでは」
「まあ、それもあるだろけどさ。なんか見るたびにもやっとするのはなんでだろう……」
「田舎者だから?」
「む、むう。たしかに僕の散歩圏内には、スタバどころか、ファミレスもファーストフードもない! コンビニもない!」
「コンビニないっけ?」
「びみょうに、散歩圏外なの! がんばればいけるよ!」
「がんばんなくていいよ!」
「東京タワーです!」
「わあ、いかにもおのぼりさんな!」
「のぼってないけどね! 思ったより、小さいな、と」
「生意気な!」
「けど、思ったより小さいだろうっていう予想をたてていたわけで、つまり思ったとおりだったんですよ」
「ますます生意気な!」
「だけど、鉄塔だと思えばでかいよな、とも思ったわけで」
「けっきょくなんなの?」
「うん、よくわかんなくなった……」
「あ、そう……」