「絵を描く前に、あたたかい飲み物を用意しても、たぶん3分もしないうちに存在を忘れるんだけど、この集中力を他にも使えないものかね?」
「他って、勉強とか?」
「いや、寝るときに」
「……寝るのに集中力が要るの?」
「寝つきがわるいんだよねー。さくっと寝ることに集中したい!」
「そういうの集中っていう? 集中してあたま使ってたら眠れなくない?」
「集中してるときってなんも考えてなくない?」
「えっ……ええー、勉強で集中してるときは?」
「なんも考えてない」
「なんでなんも考えずに勉強できるんだよ……」
「んー、べんきょうで集中したことはないからわからん」
「わかんないんじゃん!」
「でもさあ、あたま使ってないとは違うかもしんないけど、意識はないよね」
「ええっ、気絶してるの?」
「じゃなくて、自分が何をやっているかを意識している意識」
「寝てるようなもんだね」