近所?でもないけど。

5日午後0時55分ごろ、金沢市八日市1丁目の北国銀行押野支店から「目出し帽の男が強盗に入った」と通報があった。男は現金を奪って逃走し、来客や行員にけがはなかった。金沢西署によると、被害額は約1900万円に上るとみられる。

演説したり「ロマンはどこだ」って叫んだりしなかったんでしょうか(©伊坂幸太郎)。

「ねえ聞いた? 銀行強盗あったんだってよ」
「え、どこで? っていうかなんでそんな嬉しそうなんですか」
「金沢の――八日市だったか。北國銀行、一千万以上。だってよくない? 銀行強盗だよ」
「よくないよくない」
「誰も怪我させてないし、こういうのはいいんだよ、銀行いっぱいお金あるんだし」
「いっぱいあるったって、それ、違……」
「銀行ちょっとは痛い目あえばいいんだよ」
「だってどうせ保険入ってますよ」
「まあね――でもいいなあ一千万」
「あの、べつに山分けしてもらえるわけじゃないから」
「それにしても一千万もよくあったよねえ」
「今日は……五日か、いちおう五、十日ではあるけど、うーん、五日かー」
「そんなに入れて渡してやるとはねえ、田舎の銀行、ぼこいから」
「でもそれ、多く言ってるかもしれませんよ」
「ああそうか、強盗さん違うって言えないもんねえ」

っていう会話が、そこかしこでかわされているに違いない。