電話が鳴るのをひとりで待つ

また「妖精現実」から転載。

ある人が尋ねた。「死んだら死後の世界というものがあるのでしょうか。あるとして、死後の世界とはどんなところでしょうか」

預言者が答えた。「こんなところですよ」

「こんなところ?」

「あなたが今いる世界です」

「死後の世界は、今ある現実世界と似ているのですか」

「そうかもしれませんが、わたしが言ったのはそういう意味ではないんです」預言者は説明した。「反対にこう尋ねてみましょう。あなたがゲームに夢中になっているとしますよね。ゲームに夢中になっているあなたに横からわたしがこう尋ねたら、あなたは何と答えるでしょうか。つまり『ゲームが終わったらゲーム後の世界というものがあるのでしょうか。それはどんなところでしょうか』と」

「そうですねぇ…」その人はちょっと考えてから、「ゲームの世界に夢中になっていて、それからゲームをやめたとき、まあ、要するに普通に現実世界に戻るわけですよね」

「戻る?」預言者は尋ねた。「あなたはゲームをしているときには現実世界にいないのですか」

「もちろん物理的には、いつでも身体は現実世界にいますよ。でも、実際の感じ方として、心はゲームの世界に入り込むというのはあるでしょう」

「そういうことです」と預言者は答えた。「あなたの魂はいつでも神の国にいるのですが、感じ方として、身体が現実の世界に入り込むことがあるわけです」

「でも」と相手は尋ねた。「わたしはゲーム中でも現実を認識できますよ。電話が鳴れば分かるし。一方、現実を生きているときに神の国を認識していませんよね。ちょっと違うんじゃないですか、そのたとえ」

「それだけ現実に夢中になっているってことでしょう」そう言ってから、預言者は謎めいた笑みを浮かべて、付け加えた。「でも電話が鳴ったりすれば……」

……。
電話が鳴ったら死ぬのか、電話が鳴ることが死なのか。電話が鳴っていたことに気づくことが死なのか。