文学館巡り

石川近代文学


石川四高記念文化交流館の中にあります。旧第四高等中学校本館、だそうで。レンガいいよね。でもって、そのレトロが受け継がれてない(いや、ある意味つながってるのか)トイレとのアンバランスと、天井に配線が走ってるところが気に入った建物です。
3時ごろに行って、ふと気づいたら外が薄暗く、5時になっててびびったのですが、展示に夢中になっていたのではなく、それこそ本を読んでいたからなのでした。それも、こういうロケーション(犀星さんの書斎が隣りにある)なら近代文学を読めばいいものを、最近の「小説すばる」を。だって置いてあったんだもん……。夢枕獏の作品(タイトル忘れた)の台詞。

友情、それは信仰よりも深い信仰です。

うん。
現代作家にはほとんど生原稿がない、ので、わざわざ展示のために書いてもらうことがある、というのは聞いたことがありましたが、その生じゃない生原稿を初めて見ました。唯川恵の。字、うまいですけど……。直木賞授賞式の招待状まで展示してあって、……いや、うん、なんだかなー、って。サービスいいですね。
それにしても、「○○市生まれ」とか書かれてるけど、その当時はその地名じゃないよな、って、すごい違和感。「△△町(現○○市)」って書いてくれればいいのに。
装丁と挿絵の特別展示もしてました。波津彬子の生原稿とか。集英社の、古典名作の表紙をジャンプ作家が描いたときのポスター、を、おばちゃんがまじまじと見ている、のを見るのは、なんか、みょうな気分であった……。あと、作家が描いた絵とか。筒井康隆、絵、うまいんですね……。

泉鏡花記念館


スタンプラリーの簡易地図には、いかにも通りに面しているかのように描かれているのですけど、実際には菓子文化会館の裏にあるのです。いったん通り過ぎちゃったじゃん……。
作品は、昔、澁澤龍彦編のアンソロジーで読んだっきりのような。なんかわかんないけど、なんかすごい、という印象。
鏡花さんは「美しい」を描く人だよなあ。
で、マザコンっぷりをそんなに強調するのはなんでですか。

金沢文芸館


建物は好きです。コンパクトで。上下移動にエレベータを使わなくちゃならん、ってところがあれですが。階段使いたい!(職員用みたい)
中身は……うん、五木寛之のファンじゃなければ行かなくていいんじゃないかな……。

室生犀星記念館


ガラスの吹き抜けに囲まれた中庭がある建物。
犀星さんは、近代文学館で原稿を見たときから気になってました。だって字が可愛い。作品は知らん。けど、「ふるさとは遠きにありて思ふもの」って犀星さんだったんか……。
特別企画で写真展をやってたんですけど、この写真写りがまた、いちいち可愛いんである。愛嬌がある。でも本人は自分の顔がきらいで、作家らしく格好をつけようとヒゲをはやしたりしてみた、とか、とうぜん写真もだいきらいで、それでも作家だから写真を撮られる機会が多くて、このごろでは断るのもめんどうで撮られるけど、かなしそうに撮られている、だの、言うことがまた可愛いんである。なにこの可愛いおっさん。
猫も可愛かったですが。

ぜんぶ、このポーズで写ってるの……。
犀星さんが作詞した校歌を聴きましたが……中村町小学校のこれ、小学生が歌うには難易度高くないですか。というか私が歌えそうにない。1番、2番、3番、ってあるけど、2番はメロディー違う。いい歌だと思いますけど。

徳田秋声記念館


このスツールいいですね。犀星さんのところにも色違いでありましたが。
秋声さんも作品知らんです。
気難しげな顔のおっさんですが、女を描くのがうまいのだとか。


三文豪の記念館はいずれも新しく(十年以内)、どうやら金沢市は積極的に推したいらしい。
しかし、この時代の作家ってみんな上京してて、東京暮らしのほうがぜんぜん長かったりするもんなんだよな。でも作家は故郷を愛していて、その土壌で作品は育つ、……と、いうことに、なっている。
……私は作家を理解することと作品を理解することはぜんぜん別のことだと思ってるんですけど。そして、作品を理解することと作品をあじわうことも別のことかもしれない。
まあ、作家を売りにしたいならそれはそれでいいとも思ってますが。文学館というのも、作家という物語をつくっているのだ、と、思うので。
で、生まれてなくても、何かしらゆかりがあれば、文学館ってつくれるもんですが、そうなると、ほとんどの作家が集まる東京は有利だ……と、いうことにも、ならない、ような。却って特色が出ない。
地方って、どんな地方でもたいてい、「東京ではない」、「東京とは違う」、ということをアイデンティティのひとつとするところが、よくもわるくもあるような気がしますけど、じゃあ、東京自身はどうなんだろう、と、ちょっと疑問に思ったのでした。
ちなみに「東京の近く」をアイデンティティのひとつとすると、街は寂れてしまう傾向にある、ような。私は関東から出て、日本は自分が思ってたほど東京中心じゃないんだな、と感じました……。


すでに歴史上の人になってる人物に「さん」付けして、現代の人に敬称なしなのは、ふつう、逆です。……いや、なんか、脳内で「さん」付けしてるんだ……。これはむしろキャラクタ化してるんだと思います。まんがや小説のキャラクタはほとんど呼び捨てしないで、「君」「ちゃん」「さん」つけて呼びますので。「様」はあんまりつけないけど、曹操様は曹操様です。……それも歴史上の人物だよ!