みやげばなし・そのご

A「なんで何度も断言されるとうなずいちゃうの……」
B「それは、君もだから! で、うなずかないで考えてみたんだけど、時間を、すべきことで埋め尽くそうとするなら、時間がかかることを嫌がることはないよね、それがすべきことならば」
A「あ、……うん」
B「だから、君の言ってることは変だよ!」
A「うううむ」
B「ぜんぶ勘で言ってるでしょ!」
A「僕の勘は当たる!」
B「当たってないよ!」
A「……む、むう、でも、『時間をすべきことで埋め尽くそうとする』も、『時間がかかることを嫌がる』も、正しいと僕の直感がいっている、けど、君をまるめこむ理屈を思いつかないので、保留にしておいてください!」
B「まるめこまなくていいよ!」
A「んでさ、動物園の動物はヒマじゃないのかって話なんだけど」
B「あ、そこに戻るのか」
A「ヒマを感じるというのは、時間の流れを感じるということだよね」
B「うん」
A「それってどういうこと?」
B「どういう……どういうって……また抽象的な訊き方を……。時間の流れを感じているのは、意識というか、心、だよね」

時間の流れは意識の流れだ。意識の流れをコントロールすれば、時間の流れもコントロールできる。

A「でっ、できるの?」
B「いや、それはつまり、意識の流れはコントロールできない、ってことになるのでは。SF小説ならともかく」
A「というか、時間も、意識も、流れているの?」
B「それは……慣用表現……か……?」
A「意識のあるものがいなければ、そこに時間はないの?」
B「え、えええ……質問ばっかりしないでよ! 知らんがな!」
A「むう。ええと、何も変わらなければ、時間が経ったとは思わないよね」
B「そうだね。まんがとかで、時間が止まった、っていう表現は、何も動かない、ってことだよね」
A「そうなんだけど、変わらない、っていうことを観察するのは、意識ある者、つまり、生きている者で、生き物っていうのはつまるところ、いつか死ぬ者のことで、絶対的に変化する者だよね」
B「それって……ぜったいに、時間は止まらない、ってことじゃないの、原理的に」
A「だよねえ……。けど、観察する者がいなければ、そこに時間はないのか、といったら」
B「それも変な気がする。というか、意識ある者すなわち生き物、っていうのは、合ってるの?」
A「うん」
B「高度に発達した人工知能は意識を持ちませんか」
A「意識を持ったら、それはいつか死ぬよ。心は、死ぬ。いつか死ぬもののことを、生き物っていうんだよ」
B「また断言するなあ……」
A「それが僕的定義なの。死なないものは、生きていない。不死なんてものは、想像上にも存在し得ない」
B「ふうん……まあ、いいけど。ところで、逆はどうなの、生き物にすべて意識があるわけじゃないよね」
A「そ、そうですね……」
B「……」
A「……とりあえず眠いので明日にしませんか……」
B「というかこの会話はどこに向かっているの……」