国民性

アガサ・クリスティー『牧師館の殺人』(ISBN:9784151310355)を読んでいたら、夫がメイドの言葉遣いがなってないことについて、妻にもっとなんとかならんのかね、と言ったら、注意してもなおらない、でもそれはそれでいいのよ教育していろいろできるようになったらもっと給料がいいところに行っちゃうわ、って言い返されるシーンがあったのですが。夫はなるほどと妻に感心しつつ、料理ができなくて皿の扱いが乱暴で礼儀作法がなってないメイドを雇う価値があるのかと不思議に思う。思いつつ、生煮えの野菜を食べるのをがまんできるのは、たいへんにイギリス人だと思いました。
ちょうど、渡辺佑基『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』(ISBN:9784309417608)で、フランス人はどこへ行っても食に手を抜かない話を読んだので……。

 フランス人にとって毎朝焼き立てのバゲットが食べられることは、インターネットで毎日のニュースがチェックできることよりもはるかに大事なことなのである。南極や亜南極にある世界各国の調査基地において、どの生活インフラに力を入れ、何を犠牲にしているかには、はっきりとした国民性が表れて面白い。

『牧師館の殺人』のまえがきをマシュー・プリチャード(アガサ・クリスティーの孫)が書いていて、ミス・マープルは、ポアロさんと違って「イギリス人である」ところが好きらしい。ベルギー人たるポアロさんは、食にうるさいのよ……。
あと、1920年代~1930年代のイギリスでは、裕福でなくても普通に誰もが使用人を雇えていた、と書いていて、とってもびみょうな気持ちになりました……そんなわけない……。なんてナチュラルな階級意識……。