1ビットの妖精はアナログ世界で踊る

今日はコンピュータのしくみについてお話します。
さて、コンピュータのなかには妖精さんが棲んでいます。

こういうやつ。
このへんとか

このへんとかに

いっぱいいっぱい入ってて、この妖精さんがコンピュータを動かしています。
どのくらいいっぱいかというと、妖精さんをつなげると地球を何周もできるくらい。

この、線を拡大して

拡大して

拡大する。

この妖精さんの一匹……うにゃうにゃ、ひとり?、ええーと、一体の幅が1ミリメートル、てところです。残念ながら、顔も見えません……。
それぐらい、いっぱいです。
うじゃうじゃ蠢いています。
キモチワルイですね!

で、妖精さんが動かしている、といっても、妖精さんたちは、じぶんたちが何をしているか、知りません。妖精さんたちは、それぞれ、好きにしています。……そのつもりです。
どういうことかというと、妖精さんの役割は、

で、「ある」、

で、「ない」を表す、というだけなのです。
ものすごーくでかい人文字を考えてください。あなたはそのなかのひとりで、けれどもどんな絵が描かれているのかを知らない。――いや、絵を描いていることすら知らないのです。
そんなものがこのなか

には収まっているのです。
妖精さんはとってもちびちゃい。なので、人間とは意志の疎通ができないのですよ……妖精さんがいることすら知らない。

寂しいですね(……人間が? 妖精さんが?)。
ところで、妖精さんが立っているのでも寝ているのでもなく、座っていたら?
じつは、この毛がポイントなのです(毛? アンテナ? 触角?)。妖精さんの世界は、この毛がどんな高さにあるのかを感知するようになっています。座っているときはその妖精さんの大きさや姿勢によります。そういうふうにできています。ごはんを食べるようなものです。そして、げっぷをするように、他の妖精さんに信号を発したりします。

そうやって、連鎖して、動く。
毛の高さだけでなく、色とか、長さとか、丸まりぐあいとか、そういうのも区別すれば、一匹……む、む、……一体の妖精さんでもっと多くのことを表せるのでは? とも、考えられますが、まあ、そのへんは、好みです。
……好み?
妖精さん特徴センサが複雑になるので、ほどほどに、といいますか……。そもそも、厳密には、妖精さんは、それぞれ、違うのです。だから、抱え込める情報量は多いのだけれど、そこをあえて同じとみなすことで、扱いをたんじゅんにしようとしているのがコンピュータなので、あんまり複雑にするのは、ええ、好みじゃないような感じなのです。
……。
さてさて、おもしろいのは、妖精さんたちの未来の可能性も、すべて、妖精さんたちが持っている――妖精さんたち自身で表している、ということです。けれど、やっぱり妖精さんたちはそんなことを知らない。全体に対して、自らはおそろしいほどちっぽけなのです。
――と、ここまで書けば、だいたいの人は同じような妄想を抱くと思うのですが、――この世界もまた、コンピュータのなかなのではないか、……と。
文字通り、「なか」なのですよ。コンピュータによって表現された世界、ではない。なので、このコンピュータの使い手は、私たちを見てはいないのです。私たちは他の何かを表現していて、それを見ている。私たちの存在は、見ていないのではなく、見えない。あまりに小さすぎて。私たちに妖精さんが見えないように。神さまは人間をこの世界を見ていない。
妖精さんは自由だろうか? 人間は自由だろうか?
……コンピュータによって表現された世界、と、どっちがマシな妄想ですか……。

とりあえず今日は、コンピュータのなかから妖精さんが超巨大化してわらわらと出てきて遊んで遊んでとせがんでくる悪夢を見るがいいよ!