「前方後円墳です!」
「……いや、ふつう、前方後円墳ってこう描かない?」
「だって、『前』が『方形』でしょ! で、ふつう『前』を上に描くでしょ」
「あ……『前のほう』じゃなかったんだっけ……それにしても、前って上か? 下のほうが近く感じない?」
「う、ううん……?」
「という以前に、前方後円墳の場合、下が四角のほうが、安定性があるっていうか」
「見ての通り、ヒトガタに近いからでしょ」
「そうそう」
「だからあえてひっくり返ったのに……」
「あえてひっくり返る必要がどこに……」
「でもさ、『方形』とか『円』とか、俯瞰して見た形なのに、『前』と『後ろ』って垂直に立った状態で位置決めしてるのはなんでなのさ。へんなネーミング! 古代人め!」
「いや、名前をつけたのは江戸時代人らしいので、古代人に文句を言っても……」
「古代人は名前をつけなかったのかな?」
「うーん、どうだろう、伝わってないだけじゃないの……でも、つけなかったのかもね。あそこの王様(王様っていうっけ?)と同じような形で、とかいう識別をしていたのなら、名前は必要ないかも。形式に名前をつけるって、それこそ、俯瞰して見る、ってことでしょ」
「古代人は俯瞰して見なかったの?」
「というか、俯瞰して見るには情報量が足りなかったかもしれない、と」
「量」
「情報が伝わらなかったわけはないけど(伝わらなかったら同じような墓がつくられるわけがない)、量はどんだけ集まっただろうかという疑問」
「でも、集まるところには集まるでしょ?」
「……だね。やっぱり名前あったのかも」
「どっち!」
「知らないよ! てきとうな想像を言ってるだけだよ!」
「中の人の郷里は古墳がそのへんにぽんぽんあったので、ふつうそんなもんかと思ってたそうです」
「あれは多いんだよー」
「いちばん近いとこは、さっき調べたら国の史跡だったけど、とくに保護してるふうじゃなかったというか、遊び場にしてたらしいんだけど……」
「墓だと理解してたのか……?」