歯が痛い、ような気がする、のは気のせいだ。たぶん。ぜったい。

クロサギ』(黒丸/原案・夏原武)、既刊9巻まで読み終わりました。
(ドラマについての情報を求めてきた方、誤爆です。この前のは観てみたのですけど(うちでテレビを観たのは1年8ヶ月ぶりである)、……クロはやっぱりイケメンじゃないよ。イケメンはいかん、イケメンは(←イケメンに何か恨みでも?)。)
9巻(ISBN:4091510736)で、「知らねえの?」と言われて「知らない」と答えることができないばっかりに騙される詐欺、というのが登場しましたが、一昨日のアンケートとは関係ありません、たぶん。


詐欺をはたらく、というのは、気持ちいいのだろうなあ、と想像する。
いちおうこのまんがの基本設定を説明しておきます。
人を騙し金銭を毟り取る詐欺師を「シロサギ」、そのシロサギを騙す詐欺師を「クロサギ」と呼ぶ。黒崎(クロ)はシロサギのために無理心中した一家の生き残りで、その復讐のためにクロサギとなった――。
というわけで、各話にはだいたい、シロサギ、シロサギの被害者(カモ)、クロサギであるクロ、という三者が登場します。クロはカモからシロサギの情報を得て、カモが騙し取られた分のお金を取り返す。ときにカモに仕掛けの協力を頼んだりもします。
そこで、詐欺こわいよ詐欺、とならずに、詐欺をはたらくのは気持ちよさそうだなあ、などと思うところがアレです。自分が騙されるとは思ってないわけで、こういう奴が騙されるのである。
けど、気持ちよさそうなんだな。ふつうに勤め人をしているだけでは得られない多額の金銭を(ときに)得ることができる、とかいうのよりも、人を騙すこと、それ自体が快感なのではないか、と。社会や法の網の目をくぐり、裏をかき、煙に巻く――そういうこと自体が、快感なのではないか、と、想像するのです。
支配欲か。他人の命を直接に支配する――ということで、暴力・武力への願望を考えることができますけど、暴力をふるったり人を殺したりが気持ちいい、というのは、私にはわからない。けれど、(主にことばによって)人を操る、行動だけでなく意志や思想を変えてしまう――そういう「力」は、……うーむ……良いかもね、とか思ってしまうわけです。裏返せば、自分がされるのはすっごく嫌、なのですけど。
で、そういう想像をするのは、シロサギ側に立って読んでいるから、というだけでなく、クロの側にも立っているから、なのです。というかむしろお話はクロ視点であることが多く、それをふつうに読んでいての感想なのですよ。つまり私は、クロはシロサギを喰うことを気持ちいいと感じているのだろうと思っている、ということです。そして、本人もそのことに自覚を持っているだろう、と。
カモの人たちはクロにお金を取り返してもらったりして、助けられてはいるのだけれど、でも、こいつは何か違う――というような目を向ける人も、多い。その違和感はきっと、彼が犯罪者であるから、というだけではない。


この作品については、またなんか書くかも。
……いくら気持ちよさそうったって、自分でやろうとは思いませんけどね……だってあの人たちすごい勤勉で勉強熱心ですよ? 私はなまけものなんですよ……そこをつかれると、騙されるだろう(←っていうか、「悪いこと」だからやらない、とか言えないのか)。
とりあえず、今現在の私の弱点は、これ。「歯が痛い」。……いやいや違う違う、痛いのは気のせい、気のせいなんですよ……っ。