伏線は回収されない


A「……………………」
B「……? なにまんが抱えて、かたまってるの?」
A「いや、うーんと、これねえ。なるしまゆり非怪奇前線 (ウィングス・コミックス)』の、書き出しが、こう」

かつてオレには親友がいた
美しい脚を持ち その優しさは狂っていた

B「な、なんかすごいね」
A「なんかすごいでしょ! かたまっちゃうよ!」
B「ちなみに僕の足は可愛いと評判です!」
A「はっはっは。脚じゃなくて足なんだよねえ」
B「うう。脚っていうと、長さがなくちゃならん感じ」
A「可愛い足! 美しい脚!」
B「で、こんな書き出しでどんな話なんだかさっぱり予想がつきませんが……」
A「正確には、表題作『非怪奇前線』の後日譚『非怪奇前線 The AFTER』の書き出しなので、つまり『非怪奇前線』の要約になってるの。“かつて”“親友”“美しい脚”“優しさ”“狂っていた”」
B「ますますわかりません!」
A「まあ、読みなされ。で、さ。この世界に、自分の知らない法則があって、そしてその法則を知っていて裏から支配している人たちがいる、っていう想像、どう思う?」
B「は?」
A「支配している、じゃなくて、世直しをしている、でもいいけど」
B「? いや、べつに、どうとも……」
A「人って、偶然ってものを信じないんだよねえ、どうにも。偶然を信じず、運命を信じる」
B「??? そういう話なの?」
A「そうじゃない話なの。悪いことが起こって、そこに法則があるのならば、いま自分が知らないとしても、なんとかなる、かもしれないけど、偶然はけっこーどうにもならん」
B「偶然どうにかなるかもよ?」
A「そうなんだよね。それが偶然。で、偶然って、偶然です、っていえばそれでおしまいなんだけど、なぜか納得しないよね、理由があるって思うよね」
B「理由があったら偶然じゃないでしょ」
A「そうなのさ。どうにもならん、は、どうにもならん、なのだよ」
B「どうにもならんか」
A「偶然どうにかなるかもね」
B「わからんのか」
A「わからんのだよ……」
B「わからんのか……」